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♡アーティストメッセージ♡

「かさねる」

この展示では、「かさねる」という行為をテーマにした作品を集めて展示します。

私は同じ紙の上に何度もドローイングを描く時があります。子供のころのことやドイツでの日常のささいな出来事、ふと浮かぶ考え、言葉にならない感情などを重ねていきます。先に描いた線は徐々に霞んで見えなくなり、紙の中に蓄積されます。うっすら見える線は、記憶の在り方のようです。思い出せないことでも、どこかに痕跡は残っています。

年月を重ねると、身体や物も変化し、劣化します。シミのない若かった頃の肌を思い出しながら、美白クリームを塗るような日常の中で、時間の積み重なりを感じます。空間に吊るされた紙のインスタレーションは制服の形になり、社会が作る美の理想、身体への見方、帰属意識について、複層的な考えが生み出されます。

さらに、この展示には短編アニメーションも展示します。アニメーションは「かさねる」という行為とは直接的には関係しませんが、時間や物語、映像表現を通して観客は様々な感覚的な体験を得ることができます。

抽象とモチーフを行き来するドローイング、制服のインスタレーション、そして短編アニメーションを通して、見えなくなったものや残り続けるものの層を表現しています。作品は、時間や記憶身体、社会の視線、そして映像表現が重なり合う場になっています。 

March 2026 Yoriko Seto

 

 アーティスト(簡単なプロフィール

 

福岡生まれ、ドイツ在住。2024年、ブレーメン芸術大学でハイケ・カティ・バラート教授の指導のもと、マイスターシューラー課程を修了。 ブレーメン、ベルリン、ブリュッセル、そして福岡で個展やグループ展に参加。 作品はプロセス重視で実験的なものであり、ドローイング、アニメーション、インスタレーション、オブジェ、版画、アーティストブックなど、さまざまな媒体を扱って    いる。時間と空間を超えて残された個人的な記憶の断片を、日常生活の継続的な観察と結びつけ、また時折ユーモアも交えて、これらの要素をどのように再構成できるかを模索している。

 

 

【オーナーズコメント】

ドイツ・ブレーメンを拠点に活動する現代美術家、Yoriko Setoの個展を開催いたします。本展のテーマは「かさねる」。

Yoriko Setoは、和紙のような繊細な「紙」という素材を使い、日常的な衣服であるセーラー服を実物の3倍の大きさで構築します。天井から吊るされたその作品は、紙のしわや重なりが独特の陰影を生み出し、かつてそこに存在した誰かの体温や、過ぎ去った時間の層(レイヤー)を可視化しているかのようです。素材をかさね、記憶をかさねる。

ドイツ・ブレーメンでも発表され、静かな衝撃を与えたこのインスタレーションは、物質としての軽やかさと、記憶が持つ重みの境界を問いかけます。

また、会場ではドローイング、アーティストブック、版画に加え、アニメーションを用いた試みも展示。アナログな手仕事とデジタルな視覚体験が重なり合うことで、静止した作品に新たな物語の時間が流れます。福岡出身の作家が、異国の地で培った感性とともに紡ぎ出す「重なりの風景」。春のひととき、空間に浮かぶ記憶の断片にぜひ触れてみてください。

2026年3月 アートプロ ガラ 主宰 たなか照未

 

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